第2回県産三線ブランド化委員会 議事録要旨

1.委員発言(発言順、敬称略)

まず冒頭において、組合理事長渡慶次道政の開会挨拶の中で、今年度の宮良長包音楽賞に知名定男さん、特別賞に宮沢和史さんが受賞されたことを報告し、拍手でお祝いいたしました。

比嘉 康春 「三線というのは琉球伝統芸能の根幹をなすもので、組踊・琉舞などはユネスコに遺産登録されているなかで、それを支える三線を国指定にするというのは真剣に取り組むべき課題だと考える。教育機関の現場では主に海外産の安価な三線が用いられており、県産三線を見る機会が無いのが非常に気になる。琉球文化を理解してもらう為にはやはり本物を使う必要があると感じている。先日三線組合の事務局長との打ち合わせでは、大学と組合との間で包括的な連携を計るうえで、きっちりとした協定を結んで長期的な関係を結べたらいいのではと提案した。地域の文化芸術の振興に寄与するというのが県立大学の使命であるので、積極的に取り組んでいきたいと考えている。」

次に組合で行った電話アンケートについて事務局長が報告を行いました。

仲嶺 幹 「電話によるアンケートを行い、総数1166件に対し、有効回答452件を集計した。三線の保有率は47%となり、13年前の調査よりも14ポイント増えた。県民一人当たり0.79挺で県内の成人数で換算するとおよそ82万挺の三線が県内にあるということになる。「持っている三線の価格」については、「3万円以下」39%、「3~10万円」41%、「10~20万」、「20~30万」、「30万以上」が各約5%であった。「三線購入の基準」についての設問では、「価格」18%、「製作者」10%、「品質」23%、「音色」33%、「アフターサービス」10%、「その他」6%であった。
また、ウチナーンチュ大会が行われたセルラーパークで海外から参加の方々にアンケートを行った。回答者の居住国、「米国」66%、「カナダ」1%、「ブラジル」10%、その他23%となり、「何世か?」という問いには、「1世」11%、「2世」20%、「3世」40%、「4世」と「7世」が共に約1%、その他27%となった。三線の保有については「YES」55%、また三線を持って無い方で「三線に興味があるか」という質問においても、「興味がある」63%となり、どちらも県内よりは高く、三線への関心度の高さが伺える。これらのデータを大事にし、次回のウチナーンチュ大会のときにも成長・変化を分析できるようにしていきたい。」

続いて谷口教授から県内にある黒檀についてのお話をいただきました。

谷口 真吾「三線は本来地元の黒檀で作られてきたはずなので、本当は県内の木材で製作できるほうが理想だが、現在は海外のからの輸入木材がほとんどで、県内で材を調達するのは大変難しい問題だと考える。県の森林管理課にはいろいろな情報があるので協力を仰ぎ、県内の黒檀の成長調査をしておくことを提案したい。
二つ目は、黒檀と言うのは、林業的にも公的な補助金を使っても苗木を植えるということがほぼ不可能な樹種で、大規模な植林というのは難しいと考えられる。しかしながら愛着が強い黒檀は県内各所に植えられているので、その賦存調査をし、現在県内にどのくらいの量があるのかを明らかにする必要があると思う。それは、黒檀自体が世界的にも貴重な材で、今後ますます希少なものになると予測される中で、材料が手に入らないために製作できないという事態にならないよう、地元で調達する能力がどの程度見込まれるのかをしっかりと把握し、効果的な対策を打ち出せるようにするためだ。」

園原委員には三線について4つのテーマに沿ってお話を頂きました。

園原 謙
【三線の歴史について】
現在確認できる最古の三線は徳川美術館にある琉球楽器という史料で寛政8年(1796年)の物である。三線は琉球王国時代のウトゥイムチ(おもてなし)の心を表す歓待芸能として、いくつもの画図等にその演奏風景が描かれている。
【ウチナーンチュにとって三線とは】
読売新聞が昭和4年に行った日本名宝展覧会という旧諸大名家から集めた宝物展において、尚家は王冠、皮弁服などと一緒に三線2挺を出品している。日本の価値観ではお宝とは刀や宝剣・鎧兜などで、その中で楽器である三線が展示されたということは、琉球の価値観を理解するうえでとても大きな意味があると考えられる。
【海外での三線文化の受容】
家宝のような存在であった三線は、移民とともに多くの三線も海を渡ることになる。昭和26年から3年間にわたって行われた大規模な調査では、ハワイ、ロス、東京、大阪、沖縄で9,440丁にものぼる調査結果が池宮城喜輝先生の「三線宝鑑」にまとめられている。特筆すべきはこのような調査が所有者の積極的な協力のもとに行われたことであり、ウチナーンチュの三線に対する気持ちの表れと言える。
【三線文化のビジョン】
今は県指定である三線を国指定、その先には国宝、または重要文化財として、オール沖縄からオールジャパンの三線にすることができればという夢がある。県には指定文化財の三線が20挺あるので、将来的には工芸技術としての評価、無形文化財指定に向けた取り組みに繋がっていくのではないかと思う。

続いて意見交換の時間

鈴木 修司「三線組合で、沖縄製の三線と認める基準についてどこまで議論されているのかお伺いしたい。」

仲嶺 幹「現段階では、最も時間的・労働的コストのかかる棹の製作を基準としている。」

大工 哲弘「輸入物のパーツを組立て安価な三線を量産するシステムについて、音楽自体の質の劣化に繋がるのではないか。」

仲嶺 幹「輸入物のパーツを使った組み立て専門の販売店と競合するのではなく、産地の明記を徹底するなどの協力をしつつ、後継者育成につなげていけるよう模索している。」

大城 學「例えば、福山箏のように、原材料の桐が国内で調達できず、カナダで取り寄せているという例がある。機会があればそういった情報も確認してはいかがか。」

比嘉 康春「大城先生のお話と関連するが、県産クルチによる生産が困難な現状をしっかりとまとめて、製作者が困らない様に材料についての定義をしていくべきだ。」

最後に総合事務局の担当者のご意見をいただき、組合の見解を事務局長が答えました。

大城 敦史(内閣府沖縄総合事務局 経済産業部地域経済課課長補佐)「原材料の問題というのは国指定を目指すうえでは大きな論点になる。現在県で指定されている品目の中には、原材料の確保ができない為に生産量を伸ばしきれない産地も有る。また重要文化財の要件には地域の中で生産されたものを使用するとされ、原材料の代替が可能な伝統的工芸品とは違い、材料の輸入に頼ることはできないので、三線をどのように定義していくのかは慎重に議論して欲しいと思っている。」

仲嶺 幹 「県指定の際にも材の記載については大きな議論になり、結果は黒檀等と記載して代替材の使用を可能な解釈とした経緯がある。ご指摘のように県産クルチはほとんどない状態なので、代替え材の研究、仕入れ等をしっかりと対策できるようにしていきたい。」