第5回県産三線ブランド化委員会 議事録要旨

1.委員発言(発言順、敬称略)

 

司会
皆さまこんにちは。ただ今から第5回県産三線普及ブランド化委員会を始めます。はじめに渡慶次委員長、開会の挨拶をお願いいたします。

渡慶次 道政
皆さんこんにちは。お忙しい中ご足労ありがとうございます。回を重ねるごとに先生方から三線に関するたくさんのお話をお聞かせいただき、組合の職人、事務局一同大変喜んでおります。本日も活発な議論を交わすことができればと思います。それでは、平成29年度県産三線普及ブランド化委員会を開催します。

司会
それでは、仲嶺幹がワーキンググループの調査結果を報告いたします。

仲嶺 幹
事務局長の仲嶺です。早速、資料1「県内三線販売店のアンケート調査」を読み上げます。前回のブランド会議の内容を受け、販売店の現状を調査しました。今回は三線の棹を作っていない店舗が対象となっております。
はじめに、電話帳またはインターネットから170件の三線店をリスト化し、連絡不通、閉店、販売店ではない、県外の店舗である等を除いた52店舗が調査対象となりました。そのうち、回答を得られた32件の年間三線総販売数が1万1711挺。よって、1店舗あたり年間約366挺の三線を販売しており、この結果を52店舗に換算すると、年間約2万挺。ここに、県内の三線製作店の年間三線総販売数を加えると、県内での三線の年間販売挺数は約2万5000挺であると推測されます。
さらに、各販売店が開業した年を調べたところ、2000年以降に開業した店舗が多いことがわかりました。1995年以降インターネットが急速に普及し、それ以前から流入していた海外産の三線と相まって、インターネット販売が広がりました。そして2001年、ドラマ『ちゅらさん』の放送で沖縄ブームに火が付き、三線需要が増加。それに伴って販売店も増加したと考えられます。
また、販売店によって年間の販売挺数に大きな差があることがわかりました。大まかに分類すると、年間販売挺数50挺以下の店舗が11件、50挺以上200挺未満が12件、200挺以上が9件となっています。なかには年間6000挺販売していると答えた店舗もありました。
次に、各販売店で取り扱う三線の産地の割合を調べたところ、年間販売挺数と海外産三線の取り扱い数、海外産三線の取り扱い数とインターネット販売の利用率がそれぞれ正比例していることがわかりました。さらに、客層は県内が29パーセント、県外が71パーセントという結果になりました。県内ではコンクール受験のための三線購入や修理の需要が高く、県外では初心者セットの需要が高いということでした。また、よく売れている三線の価格帯は2万円前後。オンラインショップの初心者セットは2万円以下の商品が多く見受けられ、セット価格1万2000円という商品もありました。逆に10万円以上の三線がよく売れると答えた店舗もあり、それらの店舗では主に県内産三線を取り扱っておりました。さらに、学校用品を扱う業者では、三線製作キットを4000円で販売しており、年間3000個ほど売り上げがあるそうです。
20年前の調査では三線の年間販売挺数が約4万挺でしたが、それと今回の調査結果を比較すると三線の需要が減少し、海外産三線との価格競争の中で県内産三線の価格も低下していることがわかります。
続きまして、資料2「音楽団体に関するアンケート調査」の結果を報告します。この調査では各音楽団体の加盟人数の変動とコンクール出場者の変化について調べました。2017年元旦の新聞に掲載された音楽団体から、古典6団体、民謡14団体、新聞社2社に対して郵便調査を行っています。現在、古典5団体と新聞社1社から回答をいただいています。調査途中ですが、全体的に会員数の減少がみられます。今後、会員の年齢層なども含めた詳しい調査を進めていきたいと思います。
続きまして資料3「音楽団体に対して行ったアンケート調査」です。はじめに、2017年10月8日、9日に行われた安冨祖流絃聲会90周年記念公演の会場で100名の方にご回答いただいたアンケートの結果を報告します。「三線を何挺所有しているか?」という質問に対して、8割の人が2挺以上所有していると回答。多い人は10挺以上所有していると答え、ひとりで25挺持っていると答えた方もいました。また、三線の型については真壁マカビ型50パーセント、与那城ユナー型30パーセント、南風原フェーバラ―型8パーセント、知念大工チニンデーク型7パーセント、平仲知念ヒラナカチニン型1パーセント、久葉の骨クバヌフニ型1パーセント、久場春殿クバシュンドゥン型は1パーセント未満で100人中ひとりしか所有していませんでした。真壁型の三線が主流となっており、その他の型については今後の工夫次第で大きなビジネスチャンスが期待できます。さらに「三線をどこで購入したか?」という質問に対して、三線店または職人の工房と答えた人が77パーセント、インターネットが1パーセント、その他が21パーセント。その他には「親類・知人に譲ってもらった」、「骨董品店で購入した」等がありました。また「三線購入時に求めるものは?」という質問では35パーセントが音色と回答。次いで24パーセントが品質。製作者と価格がともに14パーセントとなりました。今後、製作者にこだわって三線を選ぶ人が増えるよう努力したいと思います。次に「三線製作業界に求めることは?」という質問への回答で印象的だったものを紹介します。「三線のメンテナンスを学ぶ機会を設けて欲しい」、「県外の本格三線専門店の設立」、「県外の三線教室に対する安価な三線レンタルシステムの構築」、「伝統の型を継承しつつ、新たな型を開発して欲しい」等、今後組合活動に取り入れていきたいと思います。最後に、アンケート回答者のうち70パーセントが男性、年齢は60代以上が42パーセントと、女性が少なく、全体的に高齢化している印象でした。以上が安冨祖流絃聲会あふそりゅうげんせいかい90周年記念公演でのアンケート結果になります。
また、同様のアンケートを9月に東京の時事通信ホールで行われた沖縄工芸ふれあい広場でも実施しました。三線を所有している人の中で、2挺以上所有していると答えた人が57パーセントと、三線を複数挺所有する人は県内の方が多いことがわかりました。さらに、「三線をどこで購入したか?」という質問に対して、共同販売店16パーセント、三線店・職人の工房が40パーセント、インターネット13パーセント、その他が31パーセントという結果になりました。県外ではやはり職人の三線店や工房で購入することが難しく、インターネット販売の利用が多くみられます。また、「購入時に求めるものは?」という質問に対しては音色という回答が多く、その他の回答も県内とほぼ同じ結果となりました。県内同様、県外でも職人に注目が集まるような取り組みが必要であると思われます。また、「三線教室へ通ってますか?」という問いに対して、古典が24パーセント、民謡28パーセント、独学が25パーセント、サークル活動が18パーセント、その他が5パーセントとなっており、教室には通わず、独学やサークル活動で三線の演奏を楽しむ人が少なくありませんでした。また、三線のメンテナンスを受ける機会が非常に少なくて困っているという意見が多数寄せられ、組合として何らかの解決策を見出していく必要性を感じました。さらに、今回のアンケートで三線を所有していないと答えた22人中、三線の購入を予定している人が2名、購入予定はないが9名、考え中が8名でした。まだ三線を所有していない人は、購入時に音色よりも価格を重視する傾向が見られました。最後に、県外ではアンケート回答者の男女比がほぼ同じで、年齢も40・50代と、県内に比べ若い世代が多いことがわかりました。今後も同様の調査を継続し、先生方の助言もいただきながら三線の販路拡大や普及のための方法を模索していけたらと考えています。

司会
ここで、時事通信ホールでスペシャルトークショー『三線の魅力』にご登壇いただきました照喜名委員、大工委員からその際のお話などをお伺いしたいと思います。

照喜名 朝一
ブランド化するというのは大変難しい問題もあると思います。私は大変三線に興味がありますが、最近の三線を見ていると、製作した人はこれが新しい三線だとおっしゃるかと思いますが、もったいないなぁ、という気持ちになることがあるんです。例えば、ギターの(ペグを利用した)カラクイがありまして、良いアイディアだと思います。私もこれを弾いてみました。確かに、これは微妙な音の調整ができます。だけど、地謡ジウテーとしてはとてもじゃないけど使えないんです。ぴぃーんって音を上げることができないんです。それではやはり実用三線として扱うのは無理だと思います。
今、県が指定している三線があるんです。五開鐘ケージョーもそうですし、それ以外にも10挺ほど県が認める三線があるわけです。しかし、これらもまだ国の指定にはなっておりません。それも含めて、国が指定するまで頑張らないといけないと思います。
また、沖縄の人はチムグクルが良すぎて商売が下手なんです。本来は押し売りするくらいの気持ちがないといけないのかもしれませんが、お客様任せになってしまうことが多いんです。やはり、商業としてどうすれば三線がよく売れるようになるのか、新しい三線を作るにしても、どういったものがブランドとして認められるのか、皆さんのアイディアを出し合っていただきたいと思います。これは私の実感も含めてですが、沖縄の人も近年、体が大きくなっています。外国人も琉球古典音楽コンクールに挑戦する人が増えています。私は彼らの為に少し長めの三線を作らせました。その三線で彼らは練習に励み、コンクールに合格しています。形が少し変わるだけでも使いやすくなるとか、そういったアイディアを皆さんで出していただいて、国の指定も受けて、世界にも三線を売っていけるようになったらと考えています。

大工 哲弘
先々月、三線の普及ブランド化事業の一環として、照喜名先生と一緒に沖縄工芸ふれあい広場でのスペシャルトークショーをお手伝いさせていただきました。事業プラン等を紹介しながら、三線の魅力を伝えるために照喜名先生と初のコラボレーションもさせていただきました。照喜名先生の歌声と私の八重山(古典民謡)を「やっぱり本物は違う」と、固唾をのんで聞いてくださいました。独学で三線を弾いてる方も「やはり本当の唄を習いたい」、「県産ブランド化された本当の三線を使って歌いたい」と、そういった声がささやかれたんです。東京の皆さんに少しでも三線の魅力が浸透できた、こういう形でお手伝いができて大変良かったと思います。今後とも機会があれば東京だけでなく、大阪、福岡など、都市部でこういうイベントを開催できたらと思います。

司会
ありがとうございます。どなたか意見がございましたら挙手をお願いします。

谷口 真吾
琉球大学の谷口です。三線販売店のアンケート調査、大変データの多い、いい調査になっていると思います。三線店の形態にパターンがあるということですが、各店舗の形態によってどのような形で生計を立てているのかを確認することと、その形態ごとに何挺売れたかのデータが必要です。例えば、三線店の形態にパターンがあるとしたら、その中でどのパターンが一番安いものを扱っているのか? それとも、いわゆる本物の三線をそれなりの本数売っているのか? という風に現在のデータを販売分析にまでつなげること。加えて、それぞれの店舗で購入することのメリットも、将来販売戦略をたてていく上で必要になってくると思います。それに関してのデータがあれば教えていただけますか?

仲嶺 幹
今回のアンケートは口頭だったので、谷口先生のおっしゃるような細かい報告はできませんが、作業を行う割合が高くなるほど県産品を多く扱っている印象はあります。

谷口 真吾
十分なデータがあるとわかっただけでも安心しましたが、その結果をもとに将来三線をどのような形で販売することが有利に働くのか、ブランド化委員会の中で報告して、「このパターンを採用しましょう」というような意見をすくいあげていくことが必要かと思います。

平田 大一
事務局のアンケートにはいつも感心しています。今回特に興味深いのは、製作者のブランド化についてです。例えば、舞台や映画を観る前に、宮本亜門演出、蜷川幸雄作品、宮崎駿作品等のように、誰が作ったかに注目が集まることがあると思います。ブランド化において、複眼的に多様なアプローチを考えるとき、作品そのものだけでなく、演出家や監督自身をどうプロデュースしていくかも重要なポイントになります。そういった例から、職人のブランド化というのはすごく面白いと思いました。
ここで3つの提案をさせていただきます。ひとつ目はくるちの杜100年プロジェクトが来年10周年の節目を迎えます。そこで、「三線の普及をどうするのか?」というテーマで何かシンポジウムを行うことができれば面白いと考えています。ふたつ目は、伝統の型を継承しつつ新たな型の開発、品質と音色の豊かな工芸品として後世へ残して欲しいという意見が調査の中にありましたが、三線組合が総力をあげて8番目の型を開発することもブランディングの中で重要な意味を持ちうるのではないかと思います。最後に、職人にスポットを当てた時代劇や物語、舞台や映画、テレビドラマ、小説などができたら面白いなと思いました。これは園原さんに聞いてみたいところですが、そういう何かがなければ、作り出すしかないのではないかと思います。国指定をきっかけに三線職人を主役にした舞台を作るとか、三線がどうやって生まれてきたのかっていうストーリーが見えてくると、三線そのもののブランド化につながるし、大きく普及できるのではないかという気がしました。

司会
ありがとうございます。型の誕生について何か職人にまつわる物語があるのか、園原委員からお話をお伺いしたいとのことですが。

園原 謙
「琉球国由来記」などの中に南風原フェーバラ―型が一番古いという記述があるので、フェーバラーを一番古い型として我々は認識しているわけです。その次が知念大工型となっております。平田委員のお話の中でもありましたが、「三線保有挺数率アンケート調査」(資料3)の資料の中の安冨祖流絃聲会あふそりゅうげんせいかいの方々、つまり三線愛好家の方々を対象にしていることを差し引いても、大変興味深いデータで、三線をブランド化することのポテンシャルを非常に感じました。なぜなら、三線を求める際に演奏家の方々は特に音色を重視されています。それから品質、その次のメンテナンス需要と合わせると70パーセントもあるわけです。この70パーセントの可能性こそが今まさに三線職人が消費者に求められていることそのものなのです。それに応えられる楽器を作ることこそが今求められているのです。加えて、私はあえていわゆるカリスママスター的な三線職人というより、メイドイン沖縄の三線職人が全体的に底上げされて、非常にクオリティーの高い品質が確保されることが、まさに沖縄という地場から発信することの大きな意義があるのではないかと考えます。
明治34年頃に三線組合が設立されたという記事があります。その中で、値崩れが起きた為に組合が主体となってチーガや渋張り胴の作業値段の設定をしているんです。明治34年、1901年から職人たちは地位向上を図って、涙ぐましい努力を経てこの1世紀を生き抜いてきたわけです。加えて、現存する7つの型が王国時代からずっと継承されている。これ自体がミラクル(奇跡)であることをまず皆さんに確認していただきたいと思います。新しい型の提案というのももちろんその中に含まれていると思いますが、やはり伝統の型を踏襲するということがいかに難しいことであるか、それを定型化して成形していくということが非常に難しいことであると思います。ですから、私が求めるのは、楽器である以上音のクオリティーを高めること、そして開鐘というのは弾けば弾くほど鳴り響いたという言い伝えがありますので、やはりそこを品質の基準にしてほしいと思います。さらにそれをサポートする職人の手わざの世界。伝統の型、素晴らしい音色、職人の手わざの三位一体を是非このブランド化の中で重要なポイントとして位置づけていただきたい。そこが現在三線をされている方々、あるいはこれからそれを求めようとしている方々のニーズであるということを真摯に受け止めるべきなのかなと、改めて感じました。とても良い資料だと思います。

司会
ありがとうございます。谷口委員、平田委員、園原委員からご意見をいただきましたが、今のお話に対しましてどなたか意見はございますでしょうか。

仲嶺 幹
平田さんから第8の型についてありましたが、園原さんの意見も含めて、第8の型の一歩手前の段階として、例えば嘉手苅林昌さんが南風原フェーバラ―型を好んで使っていたから、南風原型は嘉手苅モデル、みたいな。照喜名先生も大工先生も、知名先生も宮沢さんもそれぞれお使いになっている三線にプロとしてこだわりがあると思います。そのこだわりを具現化して、誰々モデルというような、バットで例えるとイチローモデルとか、松井秀喜モデルとか、そういったものが可能ではないかなと考えています。使い手と作り手が相談して、しっかり音色を作って行くということをブランド委員会の中で先生方と相談しながら進められたらと思います。

鈴木 修司
ゆいまーる沖縄の鈴木です。今、私たちは総合事務局と一緒に沖縄の染織と呉服市場の調査を進めております。本日の報告に、呉服と三線は共通点があると感じました。呉服市場はこの10年で6000憶円から3000憶円まで販売規模が半減しています。その理由のひとつに、売る側が身勝手な売り方をしてきた結果、消費者の信頼を失い一気に市場を縮小させてしまったことがあります。三線の現状をみると、やはり海外産の問題があり、ビジネスとして取り組んだ場合本当に文化が廃れていく、そして市場すら失ってしまうということが起こり得ます。
一例として、愛知県の有松絞りという染織がありますが、これも8割が海外製で、現在では産地でさえも「有松絞りとは何か?」という定義を見失ってしまっています。以前の調査で見た海外産と県産三線の比率が、ビジネスの為に海外産を推進した為に産地の意義が失われてしまった工芸品のそれと非常によく似ていた為、三線もかなり危機的な状況にあると言わざるを得ません。やはり、消費者の信頼を失わないための認証制度のような、業界のルール作りが急務なのではないかと思います。
ルール化の例のひとつに漆器があります。漆器も海外製が多い工芸ですが、日本漆器協会という団体が二次加工のどの段階までが海外で、どこまでが国内か、もしくは100パーセント国内で製作しているのかということを、認証制度を使って管理しています。他の衰退していった工芸業界や産地の事例などと合わせて参考にしていけば、今後のブランド化に役立つのではないかと思いました。

司会
ありがとうございます。続きまして、ワーキンググループから沖縄県立芸術大学との商品共同製作について、進捗状況を報告させていただきます。

仲嶺 幹
現在、沖縄県立芸術大学美術工芸学部デザイン工芸科デザイン専攻の大学院生3名と赤嶺雅教授とともに作業をすすめていきたいと考えています。三線をモチーフにしたポストカードやクリアファイルのデザインを依頼し、ゆくゆくはカレンダーや胴巻き、三線袋、ティーガー留めなどを商品開発できればと考えています。販売先としましては、組合店舗、組合の委託販売先、銀座のわしたショップ等を考えています。今年度最後のブランド会議には、商品サンプル、またはデザイン画などを報告したいと考えています。以上です。

司会
沖縄県立芸術大学との連携ということで、仲嶺先生に少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?

仲嶺 伸吾
県立芸大の仲嶺と申します。三線の型については私も興味があります。まだまだ学術的な検証がなされていないと思うんです。例えば、もともと三線というのは何なのか? 本当に首里王府が国家予算をかけて貝摺奉行かいずりぶぎょうのもとに三線主取という役職を置いていたのか? 王府はいったいこの役職をどのような意味で考えていたのか? また長唄や津軽の三味線を作るのと一体何が違うのか? 開鐘ケージョーという名前の由来や、なぜ五開鐘ケージョーがすべて真壁マカビ型なのか? なぜ王府がそれを指定したのか? 検証すべきことが色々あると思うんです。今後ブランド化していく中で作る人を指定し、本当にその人が演奏家の求める音を作れる人なのか? そういうところまで踏み込んでいく必要もあります。三線についての文献といいますか、もっと深く調査する必要もあると、個人的にはそのように考えております。

大工 哲弘
先ほどから既存の型7つの他にできないかという話がありますが、僕が高校を卒業して本格的に三線の勉強を始める際に、親父がモアイで得たお金と貯金をはたいて三線を買ってくれたんです。本当の八重山くるちで作られた三線で、後で聞くと当時200ドルもしたそうです。その三線を持って私は沖縄本島に渡り、山里勇吉先生に師事しました。ある日メンテナンスの為にとある三線屋に持って行ったんです。名誉のために名前は伏せますが、その三線屋に「大工君、この三線は型にはまっていない。ウチナーの七型があるからね、それに合っていないから削らないといかんよ」って言われまして、お任せしたら見事に削られて小真壁クーマカビ型になってしまって僕の手には小さすぎる。今でもなかなか弾く機会がなくて、なぜこうなってしまったのか、親父に申し訳ないなって。七型のせいで僕は大変な被害にあったなと、僕は今でもその三線屋を憎んでおります。ですから、例えば伝統的な組踊でも、既存の芝居そして新しい芝居がどんどん生み出されていって、そうして活性化して年月が経てばまたそれが伝統になるわけです。ですから、既存の七型以外にも三線組合の総力を結集して、10ほど型を増やして、全国コンテストをやって、それを県産ブランドにプラスしてもいいのではないかと思います。確かにこれまでミラクルで7つの型を守って来た。伝統的な沖縄のアイデンティティー、魂もございますけど、これからそういう時代のニーズに合ったブランド化も必要ではないかと思います。

司会
委員のみなさま、ありがとうございます。また後ほど意見交換の場を設けたいと思います。続きまして、銀座わしたショップの渡久地様からお話を伺いたいと思います。

渡久地 政和
伝統工芸fuzoの渡久地です。では、資料をご覧ください。これは地下1階fuzoに来店したお客様の数を示しています。初年度は正味5か月の営業でしたので、1万6000人でした。平成27年度が5万300人、28年度が5万6000人、29年度が6万1600人っを見込んでいます。月平均すると、平成27年度が4196人、28年度が4670人、29年度が5620人と、月平均来客数も上がってきています。ちなみに、1階のわしたショップでは、現在購入者が50万人となっておりますので、約10パーセントの方々に地下のfuzoまで下りてきていただいている状況です。
次は売上の推移です。初年度が5か月で935万円、平成27年度が3084万円、28年度が3255万円。月平均にすると、初年度が190万円、平成27年度が257万円、28年度が271万円。今年度は現時点で3335万円、月平均286万円と見込んでいます。このことから、年々月平均およそ20万円程度上昇しています。全体的に上昇していますが、具体的にみると、ガラスや陶器は当初から需要が高く、売り上げがほぼ横ばい。染織は徐々に上がってきており、三線は昨年度は上がっていますが、今年度の見込みでは減少傾向にあります。しかし、12月は需要が高くなりますので、来月の売上次第で上下する可能性があります。この3年間でガラスが2700万円、陶器が1700万円、染織が3300万円。三線は2番目に高い2815万円の販売実績があり、4つのカテゴリー中28パーセントを占めています。全体では3年間で1憶円ほどの売り上げがあり、三線だけの売り上げが今年度に入って少し減少傾向にあります。三線関連商品全体の約50パーセントが三線本体の売り上げ、残りは単価の安い三線小物が売れていて、金額としても大きく推移しています。ちなみに、私どもはすべての商品をバーコードで管理していて、ひとつひとつの商品の動きがパソコン上で拾い出せる点が大きな利点となっております。工芸品を扱う上では難しい面もありますが、三線組合でも今後バーコードの導入を前向きに検討していただけるとありがたいです。
次に、お客様からのお声を紹介します。「購入後の三線のメンテナンスは対応できますか?」これは購入を予定しているお客様、既に購入されたお客様ともに非常に問い合わせが多くなっています。メンテナンスがなかなかできないことを理由に買い渋るといいますか、売上に影響があるような印象があります。次に「低価格の三線があれば購入したい」というお声をよく耳にします。こちらでは5万円ほどの商品を取り揃えていて、それ以上の金額になると初心者のお客様にはなかなか手が出しづらいようで、「ネットで購入します」と言って帰ってしまわれた方も何名かいらっしゃったそうです。また、「三線のカタログはありませんか?」という問い合わせもあります。年配のお客様の中にはインターネットの環境がなく、情報が得られないお客様も少なくあrません。そういうお客様には、こちらでパソコンから情報を打ち出したり、コピーをとったりしてお渡ししていますが、それでもスタッフが苦労している場面が多く見受けられます。こちらにご来店いただくお客様は沖縄が大好きで、沖縄観光のみならず文化や食、多方面にこだわる方が非常に多くいらっしゃいます。そういう方々が三線を始めることをきっかけにますます沖縄が好きになり、継続的に当店を利用してくださるお客様になっていただけるのではないかと期待しております。
最後にスタッフの声を紹介します。三線を所有している方は、三線の小物も定期的に購入されています。三線への思い入れも強いものですから。以前使ったものとはまた違うものを購入したいという欲求が非常に高く見受けられます。そういうリピーターのお客様の為に、小物の充実が望まれます。現在fuzoで扱っている商品以外にどのような商品があるのか、今後三線組合とのやりとりをしていきたいと考えております。また、現在定期的に三線教室を行っています。その効果は非常に大きく、三線教室の生徒さんが実際に三線を購入されています。さらに、三線教室の先生方から「三線のことならfuzoに行ったらいいよ」と、ご紹介をいただき、三線を中心としたネットワークができつつあることに感謝しております。簡単ではございますが、私の報告は以上になります。

司会
ありがとうございます。何かご質問、ご意見等ございますか?

仲嶺 幹
質問といいますか、お願いになりますが、小物等の商品を銀座以外のわしたショップで取り扱っていただける可能性はあるのか? また、先ほどの三線教室も2年で216名に受講していただいて、そこに今後本格的な先生もどんどん入れていきたい。それを全国に広げていきたいと組合では考えております。それに対して、何かこう手ごたえというか、可能性があればぜひお願いします。

渡久地 政和
教室と三線をパッケージとして導入するというのは非常に面白味があります。場所の問題等、様々な事情で全わしたショップで導入するわけにはいきませんが、十分可能性はあると思います。これまでに他の店舗でも三線を扱ったことがありますが、商品としての流れがあまり良くない為に本格導入できなかったという事情があります。しかし、三線教室と三線をパッケージングすることで主客効果が期待できますので、可能性は十分あると思います。
私からも1点、お客様のご要望と個人的な希望もございますが、fuzoでもひとりで複数挺の三線をお持ちのお客様が少なからずいらっしゃいます。三線の価格帯もそうですが、色々な目安になる三線の、先ほど松井モデルとかおっしゃっていましたが、お客様が「次はこれを買おう。その次はあれを買おう」というように、何か基準になるようなものがあると面白いなと。これから三線を始める方が購入することを考えたら、安いことが重要になるかもしれませんが、複数購入される方はやはりバリエーションがあると購入しやすいのではないかと思います。お客様と直接やり取りをする中で得た印象ではありますが、こういう意見があるということをお耳に入れておいていただければと思います。

司会
貴重なご意見をありがとうございます。意見交換の前に、知名委員、宮沢委員、お話をお伺いできますでしょうか。

宮沢 和史
この委員会が発足した当初から、僕の考えは一貫しています。平田さんと「毎年くるちの成長を見ながら1杯やろう」なんて言って、くるちの杜プロジェクトに取り組み始めましたが、この木が育つのがいかに大変かを痛感しています。先ほど大工先生のお話にあった八重山くるちですとか、僕はそういうしかるべき良い材料がしかるべき演奏家の手に渡ることが重要であると考えています。くるち同様、品質のいいヘビ皮も守っていく必要性を感じます。しかしながら、消費者の声も先ほどの購入時に求めるものというアンケート結果にあった通り、音色、品質、価格重視なんですよね。安いものを買ったけれど具合が悪いとか、粗悪品を買ってしまったとか、いい物を買いたいけど高いとか。
先ほど、僕の考え方は一貫していると言いましたが、しかるべき材料はしかるべき人に届けるものとして取っておいて、若手の職人が経験と技術を身につけるという意味でも、ユシギや圧密の技術を取り入れて、くるちを上回る音質を色々な素材で挑戦することが絶対に必要だと思います。そして皮、前々回、人工皮について議論をした時にも言いましたが、僕は人工皮があっていいと思うんです。本皮でくるち、八重山くるちで作られた三線の素晴らしさというのは、僕も音楽をしている端くれとして重々承知しています。ただ、これを全ての三線愛好家に提供するのは無理ですから、これから沖縄を背負って立つしかるべき人達がきちんとしたよい三線を持てる。そういう流れを確保しながら、粗悪品でない最高級品質の低価格三線、これを追求していく時期にあるんじゃないかと僕は思います。

知名 定男
三線の型が7種類あるという話ですが、これを三線・音楽を目指す人達に知らしめる必要があるのではないかと思います。最古の三線が南風原フェーバラ―型であると、ではこの南風原という人はどういう人だったのか? いつ頃の人だったのか? いわゆる三線大工の歴史といいますか、他の大工もそうですが、そういうことも必要ではないでしょうか? 特に五開鐘ケージョー、十開鐘とありますが、果たして開鐘は誰が作ったのか? 「有名な御殿ウドゥンにあったからそれを開鐘と名づけよう」といった、どこかで軽率で安易な名付けをした可能性はないのか? 例えば、僕は15年くらい前に首里にあった博物館で西平開鐘二シンダケージョーを見たんですが、その当時で145年前の物であると聞きました。だとすると、割と近代のものだなという風に感じました。果たして、それより古い三線が沖縄にどのくらいあるのか?
僕の知る限りでは、初めに安冨祖流あふそりゅうの平良雄一さんという方が持っていた三線が、その後大阪の普久原朝喜さん、さらに知名定繁に渡って、現在私の手元にあります。そういった経緯から、この三線はおそらく100年以上は経っているだろうと、こういった三線の由来、どういう人がどういった経緯でこの三線を作ったのか? どういう過程で三線の型の名前が定着してきたのか? そういったことを含めて著名な音楽家が所有している三線にまつわるドキュメントといいますか、そういうことを含めて紹介できるマップのようなものがあれば、この三線のブランド化につながえうひとつの道になるんじゃないのかなという風に考えております。
例えば、著名な音楽家が10万円で買った三線を、1週間弾いて100万で売ったという話もあります。これは、著名な音楽家が弾いていた三線ということで値打ちを持たせたわけです。ですから、三線のブランドとしての価値観というのは非常に難しい問題で、三線に興味が湧くような、音楽家に興味を持たれるような企画、議論をもっとすべきだと思います。著名な人のエピソード、ドキュメントなどをちょっとした本にして、この先生はこういう風に三線を弾くように、音楽をするようになったんだなと、たくさんのエピソードが載れば載るほど沖縄音楽に興味をお持ちの方々にもっと興味を持っていただけると思います。

仲嶺 幹
先ほど知名先生からご提案いただいた三線とその持ち主のヒストリー、大工先生がおっしゃったようなヒストリーをぜひ組合でも記事にしたい。ブランド化事業とは別ですが、情報発信事業というものに取り組んでいまして、その中で三線にスポットライトを当てた記事を書く為のライターを育てる勉強会を実施しています。今後、先生方にどのような三線を持っているか、どういう思いで弾いているか、色々とインタビューをして組合のホームページで紹介していきたいと考えています。12月、1月頃からお願いするときがくると思いますので、その際はぜひご協力をお願いいたします。
あと、宮沢さんのご提案で、圧縮木等ですね。黒檀以外の代替木を検討すべきだということですが、先日9月13日に工芸技術センターという所に圧縮をかける機械があるということで、県の山城さんと一緒に現状を確認してきました。現在、黒檀と同程度の密度まで圧縮をかけることは可能です。しかし、これまで捨てていたような端材に圧力をかければよいわけではなく、節のない均一な木目をした一枚板状の琉球松に圧力をかける必要があるということでした。また、圧縮する際に高温で熱し、圧縮後は冷却する必要がある為、ひとつの機械で1日1挺分の圧縮木しか作ることができず、これを本格的に導入して三線を大量生産するには、予算的にかなり厳しく、沖縄電力やそういった大きな企業とタイアップして排熱を利用するなどしなければ、市場に流通させるほど価値を下げることが難しいということでした。しかし、圧縮の際に溶剤に浸けて色をつけたり、硬度を上げたり、虫よけの効果を持たせるといったことが可能ということでした。単純に黒檀に近い圧縮木を作るだけでなく、防水機能等を持たせることも可能ということでしたので、今後三線の代替木として十分に可能性が期待できると思います。今後も組合としては代替木の可能性を調査していきたいと思います。

照屋 勝武
三線組合副理事長の照屋と申します。先ほど宮沢さんから色々な材がないもんかとの言葉がありましたが、私が石川中学に通っていた頃、体育館の横に胴まわり50センチくらいのサルスベリの木があったんです。今から10年ほど前、体育館を建て直すためにその木を切るという話があったもんですから、当時の校長先生に許可をもらって、まだ高校生だった息子とふたり、手鋸でその木を倒してきて、家の倉庫で保管していました。この木が最近ようやくひねりがなくなって来たので、大学卒業後私のもとで三線作りを学んでいる息子に作らせたり、自分で作ったりしたところ、結構硬くて粘りがあって、木自体はとても軽いんですが、よい音色で鳴ってね。またもうひとつ、18年ほど前に嘉手納基地の中で建築依頼を受けたとある土建会社の社長さんから、胴回り1メートルくらいのモクマオウを手に入れたんですが、大工先生も知名先生も、照喜名先生もご存知だと思いますが、モクマオウは一度釘を打つと、二度とその釘が抜けないくらい硬いんですよね。その木も、もう10年以上は寝かせてあるからと、三線を作ってみたらこれも結構いいんですよ。
たまたまうちの息子は琉球大学の農学部出身で谷口先生の世話になっていまして、息子は木の研究をしたいということで、モクマオウとユシギ、黒檀等、うちにある材料を同じ大きさにカットして持って行って、それを叩いた時に生じるゆれとか、そういったものを調べてみると、ユシギよりもモクマオウの方が黒檀に近いという結果が出たそうです。それで今、自分のところでモクマオウの三線を作っているんです。モクマオウは在来じゃなくて外来の木ですけど、そういった物のも可能性があるというのは、今自分で作ったりしてみて感じているところです。

司会
ありがとうございました。最後に行政からもご意見をいただきたいと思います。

上原
沖縄県ものづくり振興課の上原と申します。委員の皆様のご意見やご提案を興味深く拝聴しておりました。県では昨年度から沖縄工芸ブランド強化事業ということで、三線の国指定に向けた取り組みの支援を行っております。取り組みの中で、調査や普及活動など色々あると思いますが、仲嶺事務局長から報告がありました通り、9月の沖縄工芸ふれあい広場では、三線愛好家の方々が大勢ご来場されて、非常に賑わっておりました。照喜名先生と大工先生のトークショーと演奏もありましたから、会場は溢れんばかりの人で、三線のパワーを感じていたところです。また、銀座わしたショップのfuzoで開催されている三線教室の生徒さんの発表会もございまして、工芸ふれあい広場で三線を購入されたお客様からfuzoに三線教室のお問い合わせがあったということも聞いております。そういう点からも、三線の普及活動の効果が大いに表れているのかなと感じております。いよいよ来年は国指定に向けた申請書の提出など、手続きが始まると思います。指定要件に向けてクリアしなければならない課題もあると思いますが、県も応援しておりますので、色々サポートしていきたいと考えております。

上原 清実
那覇市役所商工農水課の上原と申します。沖縄県に新しい国指定の工芸品ができるのかなと、ワクワクした思いで皆さんのお話を聴かせていただきました。那覇市も一行政として県とタイアップしながら、また組合の皆様と協力しながら頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

司会
本日は貴重なご意見を賜りましてありがとうございました。最後に仲嶺から重ねてお礼申し上げます。

仲嶺 幹
貴重なお時間をありがとうございました。当初、来年の5月を目途に国指定の書類を作ろうと考えていましたが、総合事務局の担当者から、毎年5月に審査が行われるわけではなく、書類が提出されてはじめて審査の開催を検討するということでしたので、年内11月後半を目処に書類を提出して、年度内に仕上げていきたいと考えています。2月の段階で先生方にも目を通していただいて、ご意見をいただきながら進めていきたいと考えています。今回は大変ありがとうございました。