三線のすばらしさを伝えるための、こころのちんだみ。

~第1回「三線特派員養成講座」に参加して~

三線の音色に癒されることがよくある。朝、三線をそっとケースから取りだし、てんとぅんてんと鳴らすだけで部屋の空気がやわらぎ、今日という日を前向きに過ごすちいさな勇気が芽生え、どことなく神聖な気持ちさえわき起こるから不思議だ。たったひとつの音色から、さまざまな鼓動がこころに響く。

明治時代、沖縄では「三味線会」というコンクールが開催された。当時は三線ではなく「三味線」と呼んでいたようだ。このコンテストは、唄や三線を弾くテクニックを競うのではなく、一番いい音色の三線はどれかを選ぶという、とても純粋なコンクールだったことを、園原謙氏(沖縄県立博物館・美術館 副参事兼博物館班長)の講座で知ることができた。

三線はその音色だけで、いつの時代も人を惹きつける魅力をもっているのだろう。

実はこの「三線特派員養成講座」は、三線ライターをめざす人を育成するために開催され、私もそのひとりとして参加した。

ライター経験者、琉球舞踊の地謡、現役の学生など、立場の違う人々が集まった会場は緊張感が漂っていたが、ひとり一人自己紹介を終えたころには、三線のすばらしさを伝えたいと思う同じ気持ちが通じ合い、次第におだやかな空気感へと変わった。

宮城一春氏(フリー編集者・ライター)の講座ではライターの心構えについて多くを学んだ。

最も勉強になったことは、「俗説」に惑わされてはいけないということ。例えば、「沖縄では床の間に三線が飾られている」、また「ミンサー柄は当時からいつの世までも、と言語化されていた」などの俗説に疑問をもち、自分の目と足で調べることがライターにとって必要なのだと、宮城氏は説く。

確かにそうだと思う。

私自身、三線をてんとぅんてんと鳴らすことで癒される現象を、脳内にアルファー波が生じているからだと勝手に信じていた。しかし本当にそうなのだろうか。アルファー波と三線の音色との関連性が脳科学的に証明されているのだろうか。これからはこうした疑問を常にもちながら、三線についての取材を行う必要性があると感じた。

三線は、楽器であることは間違いない。しかしそれだけにとどまらない魅力を持っている。伝統工芸製品としての魅力もあり、代々受け継がれる家宝としての価値ももつ。他にも、私の知らない三線の魅力がまだまだある筈だ。

第1回の「三線特派員養成講座」に参加しながら私は、「ちんだみ」のことをイメージしていた。カラクイで調整してはじめて音が整い、唄を歌うことができる。人に耳を傾けてもらうことができる。第2回、第3回とこの講座で少しでも見識を深めながら、私自身しっかりとこころの「ちんだみ」を行い、三線のすばらしさを言葉と文章で伝えていけるよう成長したい。

 

高木正人

沖縄県三線製作事業協同組合

支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会